世界征服と宗教
『「世界征服」は可能か』読みやすいので一気に読み終えました。
マンガ・アニメのなかでの世界征服をもつ人物組織の研究としては前半は面白のですが、
現実を分析する後半はやや不満が残ります。
この問題で宗教を扱わないのは重大な手落ちでしょう。
例えば、本書では世界征服を目論む悪役の類型として4つ挙げていますが
- すべてを正しい価値観で支配したい「魔王」タイプ
→ アフガニスタンをイスラームの価値観で支配したタリバーン。
- 責任感が強く働き者の「独裁者」タイプ
→ ズバリこれという例は思い浮かびませんが、タリバーンの幹部が過労でぶっ倒れてもそう違和感はないかも。
- 自分大好き、贅沢大好きの「王様」タイプ
→ いろんなところで名誉教授になっているあの人とか、あのような映画を大金はたいて作ったあの人とか。
- 人目に触れず活動する「黒幕」タイプ
→ アメリカで強力なロビー活動を繰り広げる宗教右派とユダヤ勢力。
とこのように、これは宗教(それも主に新興宗教)にも存在します。*1
こうしてみると、世界を征服しようと目論む悪の組織と宗教って結構類似点がありそうな気がするんですよね。
なかには宗教が出発点なのではなく、現代において支配の正統性を血筋や武力によって求めるのが難しいから、
そこを神の言葉を伝える予言者を騙っている真性の世界征服挑戦者がいるはずです。
著者の分析が解りやすく、鋭いだけにこの点に触れていないのは残念です。
とまれ知的エンターテインメントとしては十分面白いので、マンガやアニメの世界の悪役に魅力を感じる人にはこの本はおすすめなのであります。
- 作者: 岡田斗司夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 新書
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